今回の Blog では、文化とシステム=制度について、日々感じていることを綴ってみようと思います
この1〜2年、生成 AI の紹介や弊社のソリューションを説明するために、お客様先へ伺う機会が増えています。多くの企業や自治体が「生成 AI を活用して DX を推進したい」と考えていますが、実際に成果を出すのは簡単ではないように感じます。生成 AI をうまく業務や教育に取り入れるには、それを受け入れる文化的な土壌が必要ではないでしょうか。
最近読んだ クレイトン・M・クリステンセンの『イノベーションの経済学』 には、技術革新が社会に定着するには「文化」と「制度(システム)」の両方が機能することが不可欠だと書かれています。特に、文化が先行し、その後に制度が追いつく形でイノベーションが根付くことが多いのです。この視点を、生成 AI の民主化と照らし合わせて考えると、いろいろなヒントが見えてきます。
生成 AI の民主化とは?
生成 AI の民主化とは、特定の企業や専門家だけが使うのではなく、一般の企業や自治体、教育機関、個人にも広がり、誰もが活用できるようになることを指します。クラウドコンピューティングがかつて大企業向けのものから一般に広がったように、 AI もより身近な技術になりつつあります。その結果、多くの人が生成 AI を活用し、新しい価値を生み出せる可能性が広がっています。
とはいえ、技術が手に入るだけでは十分ではありません。クリステンセンが指摘するように、「文化」と「制度」のバランスが取れなければ、イノベーションは一部の限られた層にしか根付かないか、社会全体に混乱をもたらしてしまう恐れがあります。
文化が果たす役割
新しい技術が普及するには、まずそれを受け入れる文化が形成されることが大切です。特に日本では「失敗を恐れる文化」が技術導入の障壁になりがちです。生成 AI に対しても、「まだ完璧じゃないから」と導入をためらうケースをよく見かけます。
クリステンセンは、イノベーションを成功させるには「文化の変革」が先行する必要があると述べています。生成 AI を活用するためには、試行錯誤を受け入れ、リスクをとってチャレンジする風土が求められます。
例えば、企業や自治体が AI 活用を進める際には、単なる技術研修だけでなく、「 AI をどう業務に活かせるか?」を考えるワークショップや実証実験を行うのが効果的です。また、教育機関では、学生が AI を活用して創造的な課題解決に取り組む機会を増やすことで、次世代が AI を当たり前のように使える文化を育てることができます。
制度(システム)が果たす役割
文化が醸成されると、それを支える制度が必要になります。制度とは、AI を適切に活用するためのルールやガイドライン、インフラのことです。例えば、データプライバシーを守る法規制、AIのバイアスを防ぐ監視体制、企業や自治体が導入しやすくする支援策などがこれにあたります。
特に日本の自治体や教育機関で生成 AI を活用するには、まず文化が醸成された上で、ガイドラインの整備や予算・人材の確保が不可欠です。文部科学省や総務省がリーダーシップを発揮し、学校や自治体向けの AI 活用モデルを提供することも、「制度(システム)」の整備につながるでしょう。
また、技術そのものの使いやすさも大切です。 Microsoft Azure OpenAI Service のように、専門知識がなくても簡単にAIを使えるプラットフォームが整備されれば、中小企業や自治体でも導入しやすくなります。
生成 AI の民主化を進めるには?
生成 AI の民主化を進めるには、まず文化を醸成し、その上で制度を整えていく必要があります。現場レベルで AI 活用のマインドセットを育て、試行錯誤を受け入れる風土を作る。その上で、政策レベルでのガイドライン整備やインフラ支援を進めることが重要です。
日本が AI 先進国として世界に先んじるためには、「文化」が先行し、それを支える「制度(システム)」がしっかり整備されることが鍵を握るでしょう。クリステンセンの視点を参考にしながら、持続可能な AI 社会をどう実現していくか、これからも考え続けていきたいと思っています。